新刊書および旧刊書の案内などしてみたいと思いますが、どうなりますやら。(ちなみに自分で見てもとても偏りがあり、しかもまとまっていません、ご注意下さい。また
J.-P. Anker and B. Orsted,
Lie Theory - Lie algebras and Representations.
Birkhauser, pp. 352, 2003.
[Tue Sep 2 15:52:01 JST 2003]
佐武一郎,
リー環の話 [新版],
日評数学選書, 日本評論社, 2002.
以前ムック形式で出版されていたものが、新装版で出ました。これで「リー群の話」と合わせて、リー環とリー群がハードカヴァーで揃ったことになります。(そんなのどうでもいいか (^^;;;)
新装版では、本文に新たに三章が追加され、半単純リー環の表現、特に有限次元既約表現とウェイト加群の理論が詳説されています。 またJordan代数を使った例外型実リー環の構成方法も、新しくつけ加わりました。 このようなよい本が、内容をいっそう充実して、新しく刊行されるのは昨今の出版事情を考えると大変よろこばしいことだと思います。 でも逆に、どうでもよい本は再刊しないで欲しいものです。(どれとは言いませんが ... (^^;;; コンジョウ ナシ)
[Fri Jun 14 12:28:37 JST 2002]
A. Bialynicki-Birula, J. B. Carell, and W. M. McGovern,
Algebraic Quotients. Torus actions and cohomology. The adjoint representation and the adjoint action.
Invariant Theory and Algebraic Transformation Groups II (Encyclopaedia of Mathematical Sciences 131),
Springer, 2002.
不変式論と代数群の作用に関する3つの話題のサーベイ報告集。 中身はよく見てないのですが、ほとんど証明はついていないと思います。 理論のあらすじと定理の集大成というべきでしょうか?
表現論関係では McGovern の論説が気になるところですが、ざっと見たところ Collingwood-McGovern の本と重なる部分がほとんどで、 それに、旗多様体との関係と Springer 表現の部分をつけ加えたように見えます。 また、最後の章に最近の話題がいくつかピックアップされています。
ところで、この Bialynicki-Birula さんの名前はいったいどう発音するのでしょうか? ずーっと気になっているのですが、 誰か知りませんか? ちなみに最初の l には斜め線が入っており、ポーランドの方のようです。
[Fri May 17 19:53:03 JST 2002]
W. Rossmann,
Lie Groups -- An introduction through linear groups.
Oxford Grad. Texts in Math., Oxford,
2001.
やっと出ましたが、どうも期待してたのとは違い、標準的かつ入門的な教科書のようです。 ざっと目次を見渡してみたところ、不変積分の積極的な使用が目につきますが、題材的には新しい部分はあまりないように思えます。 セミナーで学部学生あたりに読ませるのによいかも? あるいは修士くらいかな?
[Fri Mar 22 15:14:20 JST 2002]
Edward Frenkel and David Ben-Zhi,
Vertex algebras and algebraic curves.
Mathematical Surveys and Monographs 88, AMS.
August 2001. (not-yet published)
出版ニュースから拾いました。
内容解説と目次を見る限りとても魅力的です。
まぁ要するに、頂点代数とその conformal block を代数曲線のモジュライの空間上の連接層として捉え、その不変量を代数幾何的な不変量と関係づけるということのようです。
ベクトル束のモジュライと Verlinde 公式の関係(向井さんの本参照)なんかと発想は同じように思いますが、
こちらの本はより表現論的な書き方がされているようです。
内容紹介には、アフィン Kac-Moody 代数の脇本実現(何を意味するんでしょう (^^;;;)、
KZ方程式の解の積分表示なども扱われているとあります。
面白そうですが、同時にかなり難しそうなので、読むための基礎知識が揃ってるかどうかが問題。
(西山は読んでみたい。けど、読まないかなぁ、やっぱり。)
[Fri Jun 22 19:28:39 JST 2001]
W. A. de Graaf,
Lie algebras: Theory and algorithms,
North-Holland Math. Library 56, North-Holland, 2000.
目次をざっと眺めてみただけで、読んでません。
リー環の構造論から、半単純 Lie 環、その表現(最高ウェイト理論)までをアルゴリズムに重点を置いて解説した本のようです。
このように書くとあまり目新しいものはなさそうに見えるかも知れませんが、ひとつ注目すべき点は標数ゼロにこだわらず、標数が正の時もきちんと扱っているという点で、
restricted Lie algebra の定義なんかもちゃんと書いてあります。
たとえば、Humphreys の教科書も標数に関してあまり制約なく書いていますが、標数が正の時の特殊な事情をちゃんと解説してあるかというとそういうことはありません。
標数が正の時のことをきちんと書いてあるのは、まぁ Seligman の本くらいなのかなぁという気もしますから、この点は貴重かと思います。
また、展開環や自由 Lie 環の場合にグレーブナー基底の初歩を解説してあります。日本でも高山さんや大阿久さんが D 加群の枠組みで取り組んでいますが、代数学だけで取っつけるという意味では、この本の解説も役に立つでしょう。
(西山は今のところ読む予定なし)
[Thu May 31 16:54:21 JST 2001]
伊吹山知義(編集),
「保型形式の次元公式」,
第3回整数論オータムワークショップ報告集, 2001.
秋に白馬で開催されているワークショップの報告集。 しかし、編集者の性格(?)を反映して、読める、役に立つ報告集に仕上がっています。 このような次元公式に興味がある人にはお勧め。
この報告集には出ていませんが、高瀬幸一さんが筑波で行なった「保型形式の次元公式」の集中講義ノートを見せていただきました。 表現論の初歩から解説されていて、しかも実例が豊富に詰まっているので、(ちらっと見ただけですが) 大変面白い入門書に仕上がっているように見えました。 (日本の!)表現論の人はあまりこのようなちゃんとした入門書を書かないので、是非出版して欲しいものです。
[Tue Apr 3 12:00:12 JST 2001]
野海正俊,
パンルヴェ方程式 -- 対称性からの入門 --,
すうがくの風景4,
朝倉書店, 2000.
このシリーズも既に4冊目、速いペースの出版で、しかもそれぞれが面白いトピックを扱っていて 野心的な印象をうけます。
野海さんの本は(まだ読んでないんだけど)、 パンルヴェ方程式の解の空間に ベックルント変換またはアフィンワイル群の作用を構成して、 簡単かつ基本的な解からより複雑な解を創り出す枠組みを与えようというもの。
このような解の対称性を扱う手法は表現論の応用として基本的かつ一番重要なもので、古くは球面調和関数、 最近ではアフィン対称空間上のラプラシアンの固有値問題、 そして KdV 方程式の場合に伊達・神保・三輪・柏原が構成したアフィン Kac-Moody 群による解の構成 などいつも中心的な話題を提供してきた。
一方のパンルヴェ方程式もまた曲者で、たとえばデタラメに並べた N 個の数字のうち最長の隣接増加列の長さを考える。 N → ∞ となったとき、この長さ関数の分布を与えるのがパンルヴェ方程式の解であったりする(AMS Notice, June/July 2000)。 おそらくこれは本書で扱われるアフィンワイル群の作用と何らかの関係があるのではないか、などと夢想したりするのも楽しい。
しかし、とりあえず読むのが先だな、読んでからまた書きます。
[Tue Oct 3 11:26:26 JST 2000]
H. Heyer, T. Hirai and N. Obata (eds.),
Infinite Dimensional Harmonic Analysis,
Transaction of a Japanese-German Symposium (1999, Kyoto Univ.),
Kyoto 1999.
学術振興会の日独シンポジウムが1999年9月に京都大学で開催されましたが、そのときのプロシーディングスです。 少部数しか刷ってないし、再版はないので手に入りにくいかも知れません。 もし図書館などに入れておこうと思われる方は 尾畑さん@名大 に連絡を取ってください。 もちろん個人で手に入れたい方も大歓迎だと思います。(残っててもしようがないし)
執筆者は Albeverio, 新井(朝男さんと均さん)、浅井、橋本、Hazod, Heyer, Hida, Hinz, 平井、洞、尾畑、上本、Kaniuth,
あ、疲れてきた (^^;;;河添、Krieg, Ludwig, 西山、R\"osler, 齋藤、下村、Speicher, Voit, 山口、山下 となっています(共著は第一著者のみ、漢字間違えてるかも)。
ちなみに西山の掲載論文はホームページで公開しています。
[Tue Aug 29 18:54:27 JST 2000]
To Index of Books
Jing-Song Huang,
Lectures on representation theory,
World Scientific, 1999.
読んでみました。
2/3 くらい(第1章 -- 第9章)は良くまとめられた、初歩的な表現論の紹介。
有限群、コンパクト群、(主に半単純) Lie 環の表現についてまとめてある。
証明については省略されている部分も多いが、ま、ここまでで 128 ページだから、
それもしようがない。大変良くできていると思う。
特に第9章は、自然表現の tensor 積で全ての表現が得られることについて各古典群についてかなり突っ込んだ議論がなされている。
通常あまり触れられない話題なので西山には新鮮だった。(記述は Fulton-Harris にかなり依拠しているようである)
例外型群については G_2 型の時に詳しく調べてある。(Huang-Zhu の論文に基づく)
残り 1/3 がこの本独自の部分といえるだろう。話題は二つあり、一つは不変固有 K 球関数の空間の構造定理であり、もう一つは極小表現についてである。
不変固有 K 球関数の空間の構造定理の方は、大島、Wallach との共著論文に基づき、その次元公式、固有値が generic な場合の不変固有関数の空間の主系列による分解定理などを証明している。 ただ残念なことにこの部分にはミスプリントが多く、初心者にはかなり読みづらいだろう。 論文を読む方が早道かも知れない (^^;;;
極小表現の方は、群を複素単純リー群として、さらに極小表現の定義に K-spherical であることを要請した上で、具体的に表現を構成している。 この K-spherical であるという部分は、実の場合には意味をなさなくなるので要注意である。 ただしこうすることによって、Kostant の K-spherical 表現の分類定理が使えるので、かなり見通しは良い。
さらに Kostant-Brylinski の shared orbit の分類を使って、極小表現を十分大きな部分群 H ⊂ G に制限したときの分解を与えている。 この場合 shared orbit というのは、極小巾零軌道が H の作用で概均質空間になっているときに言う。 この部分は本書の白眉といえる部分で、スリリングで面白い。
極小表現の部分は、全般に J.-S. Li や C.-B. Zhu, Adams, Vogan との共著、あるいは自身の論文に基づいているが、 論文を読む前にこちらを一読することをお勧めする。
ある程度表現論を学んだものであれば、第11章くらいから読み始めると面白く読めるのではないかと思う。
[Mon Jun 12 12:01:00 JST 2000]
To Index of Books以下は、最初に書いたコメント:
シンガポールで見かけたので、買おうかなぁ、どうしようかなぁ、とか迷ってたら、 Cheng-Bo Zhu が横から、「そんなの買うことない、献本を送ってくれるよ」とか言ってて、 結局本当に Huang さんに献本をもらってしまいました。 厚かましい西山です。 Huang さん、どうもありがと。
内容は、有限群、半単純 Lie 環、コンパクト群、半単純 Lie 群の4つの対象についてそれぞれ構造理論と表現論の初歩を与えるといった 意欲的なもの。 そのうえページ数が 189 ページという短さ! まぁ、企画の段階だと crazy と言ってもいいぐらい
無謀な内容といえる
し、表現論の教科書の常識に反しているような気がする(笑)。 まだ読んでいないので証明などがどの程度省略されているのか気になるところだが、 とりあえず手っ取り早く表現論を勉強したい人には良い本だと思う。最後の章は
複素群の極小表現とか、dual pair 対応の理論
とかにあてられていて、専門家にはここら辺りが面白そう。 特に日本語の本では Harish-Chandra 加群など現在半単純リー群の無限次元表現論に欠かせない概念があまり紹介されることがない。 これは嘆かわしいことだけど、本書の Part IV が要を得て簡潔にまとまっているように思う。また読んだら報告します。
[Wed Apr 12 18:11:20 JST 2000]
J. Adams and D. Vogan,
Representation theory of Lie groups,
IAS/Park City Mathematics Series, Volume 8, AMS, 2000.
さっそく全編に目を通してみました。 最初の Knapp-Trapa の論説は一応基本的なセッティングについての大まかな確認で、 そのあと Zierau-Barchini, Vogan, Vilonen, Li の4つの論説が主な内容です。 専門家は Knapp-Trapa を省略するのが賢明ですね。
全体的なテーマとしては、(実)半単純リー群のユニタリ表現の分類と幾何学的実現ということになるでしょうか。
Zierau-Barchini はコホモロジーの空間上への表現の実現とそのユニタリ内積の定義について述べています。 技術的な細部がかなり煩雑ですが、特に Zierau のものはよくまとまっていて面白いです。 Barchini のものは面白いのですが、理論がまだ途中までという感じで計算の follow も大変。 こちらについては論文を読んだ方がよいかも知れません。 表現は(一般化された)旗多様体上の開軌道に対応して構成されますが、 これは随伴軌道の楕円軌道と同じなので、orbit method の観点からすると要するに楕円元に対応する表現の構成をやっていることになります。 代数的には cohomological induction ですね。Vogan は orbit method の哲学の講釈の後、巾零軌道に対応する表現の構成について。 もちろんまだ発展途上なので、完全な解説ではありませんが、 Harish-Chandra 加群と、(g/k, K)-加群、そして軌道上のK-同変ベクトル束の切断との対応がかなり詳しく与えられていて面白い。 彼の論文にはこっちの良く知っているはずのことが、ハッとする形で書かれていたりしていつも楽しく読んでますが、 今回も (8.16)(e) 式あたりは新鮮でした。 Exercises もなかなか良い。
Vilonen は Schmid-Vilonen の一連の仕事の一部分を解説しています。 旗多様体上の軌道という幾何的なものから出発して、代数幾何的手法(+semi-algebraic method)で表現の分類、大域指標の記述をやってのけるという大業の連続ですが、内容が(あるいは省略が?)多すぎて、ついていくのは正直かなりつらい。 モーメント写像を通して、松木対応が Kostant-関口対応を導くというのが最終章で、西山にはここが一番面白かった(けど、余り良く理解していない)。
Li は reductive dual pair の話と極小表現を絡めて扱っています。 最初のうちは結構証明もあったりして、初等的についていけます。 特に oscillator ( Weil, metaplectic, ...) 表現のさまざまな構成方法は論文などではあまりお目にかかれないでしょう。 途中からは問題提起型になっていきますが、結構到達可能と思える問題も多く、大学院生には材料の宝庫となっていると思います。 これについては こっち を見てください。
全体として、 大学院生向けに書かれている本のはずですが、 かなり専門的といえます。 しかも表現論の中でも特殊な話題を扱っています (例えば Plancherel の定理や Fourier 変換などの理論は全く出てこない)。 しかしそれでも若い人にお薦めしたい本の一つです。 また一応最先端の話題にまで迫っていますので、専門家にとっても survey や確認のために役立つでしょう。
[Fri May 26 14:41:01 JST 2000]
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