「極小表現が面白い」と書いたのが 去年の8月 だから、あいも変らず進歩がない。 そこに書いた諸々のことを読み直してみると、自分の意識としてこれまたあまり変化していないことに驚く。 結局人間って新しいことをどんどん考えつくのは無理なのだろう。 なんだか周期的に同じところをぐるぐる回っているだけかも知れない。 少なくとも西山は。
ところでその時に書いた IAS/Park City の Summer Institute の Proceedings が今年になって出版され、 あらためて J.-S. Li の極小表現の論説を読み直してみた。 結論から言うと、
いくつかの問題を(主に Li の論説から抽出して)挙げてみると、
極小表現の分類問題。あるいは、今までに得られた極小表現のリストですべての極小表現が尽きていること。 またユニタリでないような極小表現が存在するのかという問題。
極小表現の良いモデル(実現)を与えること。いくつもある方がよい。例えば Sp_n の oscillator 表現については、 Shroedinger model, lattice model, Fock model などが知られていて、どれも面白い。
dual pair の分類。これは Lie 環レベルでも良いが、なにしろ極小表現上で互いに full commutant になっているような 部分群や部分 Lie 環の組を見つけてそれを分類すること。表現する前には互いに commutant になっている必要はないが、 それは結論として従う(と思う)。部分群については、一方が有限群のようなものでも十分面白い(らしい)。
dual pair への表現の制限を分解すること。特に離散的な分解が手が出やすく、応用も面白い(?)。
主系列への埋め込みの問題とか、(一般化された) Whittaker モデルの決定。
行列要素の具体的な計算。Kostant の計算によって超幾何関数などで書ける場合が知られている。
極小表現の表現空間は極小巾零軌道上の関数環とほぼ一致するが、 dual pair などの問題を巾零軌道の幾何(シンプレクティック幾何? 代数幾何?)の問題に焼き直すこと。 あるいはそれによって得られる幾何の問題への feedback 効果。
Li の論説とあわせて、Adams の講演録 The Theta-Correspondence over R (出版されてないけど、 彼のHP で手に入る)も読んでみるとよい。 こちらにもすぐ手につきそうな、しかも比較的面白そうな問題が満載されている。 少し古い (1994) とは思うけど、どこまでのことが知られているかをおおざっぱに掴むにはとても便利な論説だと思う。
あ、ちなみに上で挙げた問題に挑戦して、
Li の論説はほとんど実 Lie 群に宛られているが、複素 Lie 群の極小表現については、 J.-S. Huang の本 がかなり面白いことを最近読んでみて発見した。 こっちも見てみるとよいと思う。
[Fri May 26 11:36:58 JST 2000] [revised, Fri Jun 2 15:08:05 JST 2000]