極小表現

注意!! この項は専門家向です

何の専門家向かって? そりゃ読んでみなくちゃ分からない。(^^;;;

何だか最近極小表現に凝ってます。 表現論(の一部の)分野では、少し前(*)から流行してるので、単に流行に罹ってしまったに過ぎないとも言えますが、 いきおいで解説を書いたりしました。 凝ってるという割には肝心の Kostant-Brylinski の論文 も全部読みきってなかったりするので、 情けないです。 しかしこうしてみると、

Kostant の目の確かさ

には驚かされます。 当時から「極小表現」とは断ってないけど $ SO(4, 4) $ の論文を書いたりしてますからねー。これがまためっぽう面白い。

極小表現の具体的構成については最近一段落してきて(+)、 入門的な論説 も J.-S. Li によって書かれています。 これは現在 preprint ですが、近々 IAS/Park City Summer Seminar (1998) の Proceedings として刊行される予定。 Li の他に、Vogan (orbit method), Zierau (cohomological induction) それと Knapp (Langlands classification) (?) が執筆しているのでこの本はきっとバイブル的なものになるに違いないと思います。

極小って言うだけでなく、「小さい」表現(**)も注目を集めつつあります。 例えば Huang-Li の論文 では spherical orbit に付随した表現が話題になっているし、 Lee-Zhu の論文 (Trans. AMS, 1998)では自明な表現の theta-lift (これも小さな表現です)が話題にされていたりします。 unipotent 表現には違いないけど、そのうちさらにまだ小さいという印象を受けます。

Goodman-Wallach の quaternionic case についての刺激的な論文が出てから、 このような小さな表現を使って dual pair の対応を考えるというような 論文 もボチボチ出ています。 Schiffmann の先駆的な仕事も注目に値すると思います。

なんだかまとまりのない項になっちゃったなぁ。


(*) ここ10年ぐらいでしょうか? Vogan の草分的な論文が出たのは確か82年だったと思うから、20年にはならないはず。

(+) 構成は全て完了したというのが共通認識ですが、まだ「これで全部」という主張はあまりないように思う。 誰か決着つけてくれないかと期待してます。 また、構成とは言うものの完全な理解とまではいかないので、いろんな実現方法を研究すべきだと思います。

(**) この「小さい」ということの定義は難しい。共通認識としては $ K $-type の重複度が 1 であることというのはあるけど、 それで十分というわけでもないと思う。 随伴サイクルの重複度が1というのともギャップがあるだろうし、何かうまい特徴付けがあるといいんですけどねー。

[Thu Aug 12 18:27:56 JST 1999]