新刊書の案内などしてみたいと思いますが、どうなりますやら。(ちなみに自分で見てもとても偏りがあり、しかもまとまっていません、ご注意下さい。また
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向井茂,
モジュライ理論1,
岩波講座/現代数学の展開/13、
岩波書店, 1998
落合さん@九大に噂を聞いて読んでみました。 面白かったです。 最初と最後が特に面白く、 不変式論ってこんな風なのか、と認識を新たにしました。 中間部分も不勉強な西山には勉強になることばかりで、楽しく読めます。 永田先生のヒルベルトの第14問題の解決についても書いてあって、 どうやって証明するのか初めて勉強しました。
個人的には簡約代数群の定義の仕方(ヒルベルト流?)と、 最後の非特異超曲面(semi-stable な超曲面?)のモジュライの構成が強く印象に残っています。 あと、すごいパワーで何でも環でも全部計算しちゃうあたりも(落合さんも感心(?)してましたが)感動的でした。
難点は、ミスプリが多いこと。ところ構わずあります。 堀田先生はご自分の本(環と体1)を評して
なにしろ第2巻が楽しみ。
[Fri May 21 16:40:21 JST 1999]
Joe Harris,
Algebraic Geometry -- A first course,
GTM 133,
Springer Verlag, 1995 (corrected 3rd printing, original in 1992).
すごい本です。全編これ例の塊り。 おまけに演習問題がこれまたすごい量の濃い内容。 序文に、
Veronese 曲面、Segre 多様体、determinatal variety (これの日本語訳ってどうなってるんでしょ?)、 種々の curve, scroll, secant variety, Gauss map などが余すこと無く解説されています。 しかも一度出てくると終りではなくパワーアップしながらなんどもなんども出てくるところなんか、著者の経験の奥深さを物語っているといえるでしょう。
著者が書いていることでもありますが、この本ではスキーム理論はまったく出てきません。
すべて多様体としてやる。もっとも体は代数的閉体ではあるけど、標数はほとんどの場合制限がありません。
それは強調されているけど、逆説的に、いったいどんな場合にスキームの理論が真価を発揮するのかが、その都度コメントされていて、
Grothendieck 流の話に入るための良き動機付けになっています。
誰か演習問題解いて解説書出しませんか? (^^;;
[Fri May 21 16:28:36 JST 1999]
R. Bott / L. W. Tu (三村護訳),
微分形式と代数トポロジー,
シュプリンガー・フェアラーク東京, 1996
何を今更、と言われそうですが、買ってからはや3年が経ってしまったんですねー。
月日の経つのは速いです。
ようやく暇が少しできたので今年の初め頃に読みました。
面白かったです。生涯何冊とは出会わない名著に入ると思います。
ホモロジー理論の本も何冊か読んだし、スペクトル系列の話なんかも勉強する機会は多いですが、
何となくしっくり来ないものを感じていました。
しかしこの本ではベースを微分形式に固定して具体的な微分幾何の話として展開するので、その意味、原初的な使われ方がとてもクリアです。
Leray, Serre といった人たちの偉業もおぼろげながら理解できたような気がします。
第IV章の「特性類」の章がとびきり面白かったです。
グラスマン多様体とそのチャーン類の計算、ベクトル束の分類と(唯一の)コホモロジー不変量としてのチャーン類の話
なんかも、素人の西山には新鮮でした。
なかなかこんな話を入門的に書いてくれている本はないですからねー。
対して、少しだれ気味だったのは真ん中部分(第III章の後半)のホモトピーの話。
面白く感じなかったのは、専門分野の違いかも知れません。
ミスプリなどは少ない方ですが、おもに日本語訳の過程におけるミスプリが目立ちました。 なにしろ同じ行が二度印刷されていたりする。
示野信一,
Maple V で見る 数学ワールド,
シュプリンガー・フェアラーク東京, 1999
大学での教材(示野信一、Maple V 入門、岡山理科大学理学部応用数理学科)を大幅パワーアップしてシュプリンガーから出版されました。 Maple 本も最近はたくさん出てますが、数学の楽しさを扱っている本はまだまだ少ない。 この本は Maple の面白さよりも、数学の面白さの方に重点を置かれて書かれた好著だと思います。 敢えて難点をあげるとすれば、それぞれの話題がつまみ食い的になってしまい、掘り下げ不足の感じがあることですが、逆に初心者にはむしろその方がよいかも知れない。 教師が頑張りすぎると生徒がついてこれませんからねー。
著者自身によるホームページもあります。
[Thu May 6 18:28:59 JST 1999]
A. Borel,
Semisimple groups and Riemannian symmetric spaces,
Hindustan Book Agency, New Delhi, 1998 ISBN: 81-85931-18-6
Borel の新刊というので、Hindustan Book Agency という名前にも惹かれて買ってしまいました。 でも内容は1950年代から60年代の話でした。ま、失敗に近いです。歴史的な話に興味があったらおもしろいかも知れない。 もちろん Borel のファンにはおすすめで、最初の Foreward のところはゴシップとしてはおもしろく読めます。
どうも Borel ファンからはお叱りが来そうだなー (^^;;;
[Tue Apr 20 17:24:04 JST 1999]
高橋哲也
$ p $ 進体上の簡約代数群の admissible 表現入門
Rokko Lectures in Mathematics 4, 神戸大学理学部数学教室
各数学教室には配布されているのでほとんどの人が目にしていると思います。 内容は全不連結局所コンパクト群の表現の基礎的事項(特に指標、フロベニウス相互律)[前半] と p 進代数群の表現論(Jacquet functor, supercuspidal 表現) [後半] とに分かれて丁寧に解説されているようです。西山もこれで少し勉強しようと思っています。
Rokko Lectures in Math. からは他にも佐藤文広さんの「Eisenstein 級数と概均質ベクトル空間のゼータ関数」というタイトルの集中講義録も出ています。
ご希望の方は少なくとも高橋さんのものは著者のところにたくさん余っているようですから、請求してみてはどうでしょう? 佐藤さんのところにも「限定若干名様」ぐらいの余裕があるようです。
[Mon Apr 19 19:07:14 JST 1999]
最初に「(佐藤文広さんの) p 進体上の Fourier 変換の集中講義のまとめなども出ていておもしろいです」と書いたのですが、これは真っ赤な嘘でした、申し訳ない。こちらは筑波講義録でした。お詫びして訂正します。To Index of Books
R. Goodman and N. R. Wallach,
Representations and invariants of the classical groups.
Encyclopedia of Math. and its Appl. 68, Cambridge Univ. Press.
またまた表現論(不変式論?)のすごい本が出ました。ページ数が 685 p. もあります。内容も充実しているようですが、表現論の本って何でこんなに分厚いのでしょうか? もちろん西山はまだ読んでいませんが、構成は次のようになっています。
西山にとってはすぐにでも使えそうな本で有難いですね。学生のころに平井先生から「専門家は、重要な実例は具体的な計算を含めて
寺田至/原田耕一郎,
群論,
堀田良之,
環と体 1,
岩波講座現代数学の基礎 11, 岩波書店, 1997.
ご注意 : *** 西山は読んでいません。***
堀田先生の方は読みました、最近です。つい先日谷崎さんの第三巻が本屋さんに出ていました。その中に第二巻の目次もありましたね。こちらももうすぐ刊行なのでしょう。(1998/6/4)
「群論」の方は標準的な有限群論が約半分、残りは有限群の表現論、対称群の表現論、有限単純群の分類とムーンシャインとなっています。もちろん moonshine (=たわごと、密造酒 という意味らしい)についての解説は日本語の成書としては初めてで Borcherds の Monster Lie algebra とかにも触れてある。しかしやはりページ数不足でしょうか? 対称群の表現では Specht 加群の話が書いてあります。これも日本語の解説としては初めてかも?
環と体は第二巻がやはり堀田先生、第三巻は谷崎さんらしい。非公式に伺った話では次巻は代数幾何的なトピックス(リーマン・ロッホとか合同ゼータ関数とか)も入る予定とのことでした。西山には次元論と Cohen-Macaulay の話が役に立ちそうで、勉強しようと思っています。
ところでグレーブナ基底の話はこの講座のどこかでは解説されているのでしょうか?
グレーブナ基底については堀田先生の本にちゃんと記述がありました。読んでないのがバレバレですね。どうも申し訳ありません。To Index of Books
これから院生も増えてきっと修士論文が計算問題化していくでしょうから、需要の面から考えるともう少しボリュームのある解説が望まれるところですが、可換環論はあまりにもたくさんの話題があり過ぎてしようがないのでしょうね。
J. Fuchs and C. Schweigert, Symmetries, Lie algebras and representations (A graduate course for physicists), Cambridge Univ. Press, 1977.
To Index of Booksご注意 : *** 西山は読んでいません。***
副題にもあるように教科書に使えるようにという徹底した配慮がなされています。本文中には Summary, Keywords, Exercise が囲み枠で載っている (^^;; これって日本の受験参考書のノリですね。
目次をパラパラと見た感じを述べてみます。内容的には知っておくべきスタンダードな事項はほとんどのっていて、数学の研究者(専門家以外の?)にもちょうど良いかも知れない。ただ量子群の扱いは最後の章だけのようで約30ページほどと少し少ない印象を受けました。
全体としては非常に好感の持てる良さそうな本に思えます。大学院初年度ぐらいか、それだと少し難しそうか、というあたりのようです。
Masaaki Yoshida, Hypergeometric Functions, My Love, Aspects of Mathematics 32, Vieweg, 1997.
To Index of Books今日大学の本棚で見つけました。もちろんまだ読んでませんが、序文だけは読みました。すごいです。まぁ題名からして大分きてますが。
数学にはこんな本が欠けているなぁと思っていました。少し身辺が落ち着いたら本文も読んでみてまたレポートを書きます。ところで噂のコーナーでも紹介した数研の講究録「概均質ベクトル空間の研究」の一番最後に行者さんが信州大学で講義したノートが収録されています。これも Schwarz の仕事 (Deligne-Mostow と続いていく) を紹介したもので本書と因縁が深いと思われます。学生さんならこちらから読まれても良いのではないでしょうか? ('97/7/24)
今日見たら共立から日本語版が出ているようですね。しかし英語版の方が前書きのインパクトが強いな。
ジャン=ピエール・シャンジュー、アラン・コンヌ「考える物質」産業図書(1991)
To Index of Books新刊書ではないが、感想文を(書評ではありません)。 立教大学の佐藤先生から貸していただいた。シャンジューは神経生理学者でコンヌ はもちろん有名な数学者。この二人の人間の思考とか創造の能力をめぐる対談である。
もっとも対談と言っても日本の軟弱な対談集を思い浮かべてはいけない。これは二人 だけの討論と呼ぶにふさわしいかもしれない。シャンジューについてはよく知らない が(なんか怪しげでいいかげんそうなおじさんである)コンヌは今世紀(残り少なき 今世紀)を代表する現役ばりばりの数学者である。二人の切り口は鋭いが、まぁ、こ とごとくすれ違っていると言えよう。(^^;;
数学者のひいき目から見る限り、責任は主にシャンジューの方にあるように思える。 もちろんコンヌも悪いといえば悪い。コンヌの誤りはシャンジューがコンヌの話を理 解していて、しかも彼が自分自身の考えていることを述べていると思っているところ にある。ジョーンズの仕事の話をシャンジューが理解できるわけないではないか。
シャンジューは知識人ぶったところがあり、必ずしも自分の考えたことを述べるので はなく、歴史的な思考の枠に囚われ、その枠組みに議論をあてはめようとする悪癖を 持っているように見受けられる。
討論にすれ違いはあるが、西山にはコンヌの数学に対する考え方がよくわかっておも しろかった。コンヌは数学を「発見する」と言う。例えば探検家が新大陸を発見する ように「数学を発見する」。養老猛の「数学者は数学を現実と想っている人のことで ある」というくだりはここから来る。
また数学研究のレベルを3つに分けて、「機械的な計算のレベル」、「戦略や発想の 転換を必要とする高度なレベル」、「瞑想的な偶発性を伴った天才的な創造のレベル」 と分類している。
多くの数学者が第二のレベル、あるいはそれより低いと考えられる。また計算機は現 在第一のレベル以下にとどまっていると彼が考えていることもおもしろい。実際これ には西山も異論はない。いずれにしろ第三のレベルは彼自身にとっても神秘的なもの のようである。西山は思うにこのレベルに達したことは一度もない。
「第一のレベルにある人は論文の文法的な誤りや、計算の細かいミスを大変よく指摘 します」といったような表現があり、「すると僕は第一レベルかなぁ?」などと思っ たりする。いずれにせよ優秀な学生はこのレベルであり、ほとんどの者が第一のレベ ルにさえ達しない(つまり第0レベルか? (^^;;;)。
第三のレベルについて彼が無目的性とか、瞑想的とか、あるいは偶発的というような 形容詞を用いることは非常におもしろいと思う。昔のマンガで、非常に困難な計算に ぶちあたったとき、瞑想状態に入って本人の意識とは無関係に答えをたちどころに出 す、しかも本人はそれを知らないといったようなのがあったと記憶する(萩尾望都と か佐藤史生とかそのあたりか?)。この場合「計算が早くできる」のであり、瞑想状 態が一番独創性にあふれるというのとは正反対なような気がするが、なにしろ人間は 瞑想状態に何か神秘を感じるらしい。
またゲーデルの定理のあたりのコンヌの解説はなかなかよい。明確に「数学には結局 形式化できない(論理言語化できない)部分がある」と言い切っている。
僕自身が感じることは次のようなものだ。数学は各人の心の中に住んでいて、数学者 はそれを言葉として外の世界に映す。しかし言語化する前のほうが本物で、言葉とし て表された数学は単なる影にしかすぎない。この二つ(心の中にある数学と言語化さ れ表現された数学)は同等ではない。
最後に訳について一言。訳者の名前は敢えて挙げなかったが、訳はひどい。こちらは 数学者なので数学の誤訳ばかり目に着くが、きっと神経生理学のほうも誤訳が多いに 違いない。しかも一見意味が通っているように読めるから曲者である。フォンノイマ ン環の理論を少しでもかじったことがある方なら68ページのあたりを読んでみられる とよい。
一番最後の部分の「解読の鍵つき暗号」というのもいただけない。多分これは「公開 鍵暗号」を意味しているものと思われるが、いまいち定かではない。まぁしかしこの ような本の訳は難しいには違いない。あまり責めるべきではないのだろう。こういう 所が僕の第一レベルである。
上記の文中の「」は引用を意味していません。西山は原典を確認しながら書いている わけでなく、読んだ後の感想文を書いているだけです。引用が不正確ということは単 に西山の理解力の足りなさを意味しています。
樋口禎一 他著, 曲面上の関数論 -- リーマン・ロッホの定理へのいざない --, 森北出版
To Index of Books今年は前期に複素解析、後期にルベーグ積分の講義がある。それに少しぐらい役に立つかなー、という期待もあったし、なんだか著者たちの意気込みがすごそうなのでちょっと興味もあって読んでみた。
結果は「意図したことは良かったが、もっとちゃんと練り上げてから出版して欲しかった」となる。なんだか文章中のテニヲハができていない。いや、言葉の乱れている西山がいうことではないのだけれど、本当にひどい。数学の内容があってればいいじゃないか、という意見もきっとあると思うのだが、ミスプリもまたひどい。初めて勉強する学生だったら何を信じて読めばいいのかわからなくなることもあるに違いない。さらに論理的な整合性に欠ける部分もあるし、難しい箇所を飛ばすかと思えば、あまりにもくど過ぎる部分もある。論理的な整合性に関しては何ヶ所も問題点はあるが例えば系 3.18 の証明とか、定理 9.5 の直後から始まる定理 9.6 の証明を読んでみられると良い。
欠点ばかりをあげ連ねてしまったが、西山はこの本が気に入っています。数学の本はこうでナクッチャいけない。微積の教科書とか線型代数の教科書が溢れている中で、あるいは数学のパズルとかあやしげな人たちが書いた数学の題がついた数学でない本が溢れている中で、「数学はこれぐらい面白い」という実用的な教科書を書こうとしたことは意味があると思う。「これは難しそうで、どうせ学生は理解しないから」と避けるのではなく、かなり正面切っていろいろなことを解説している姿勢は好感が持てる。
というわけで真剣に改訂版が出ることを希望します。すくなくとも序文の「ドーナツ面上には本質的には有理型関数が一つ」の下りはちょっと誤解を招くんじゃないでしょうか? もちろん微分まで許して体として生成、そのアデール化(?)をとればいいわけだけど、そんなこといってもなー。リーマン面ってみんな複素一次元なんだしなー。('97/4/21)
杉浦光夫(編), ヒルベルト23の問題, 日本評論社
To Index of Books数セミに載ったものをまとめたもの。大幅な加筆があるものもある反面、なんだか毒にも薬にもならないおざなりな解説もあるにはある。 しかし全体的にはなかなか面白い記事が多く、お勧めの一冊。でも一般の数学愛好家とか学生にはちょっと難し過ぎるんじゃないのー? と思うのだけど、やはりそう思うのは西山に実力がないせいか?
なぜ面白くなるのか、というのはいわずもがなではあるけれど、やはりヒルベルトの問題選択の方向というか、それが面白いのだと思う。確かに正4面体の体積と直方体の体積が分割等積か?というような趣味的な問題もあるが(これさえもきっとヒルベルトの頭の中では空間のタイル張り問題、そして保型関数とかリーマン面の問題に関係しているに違いないのだ)、やはり圧巻は第19問題から始まり23問題に終る、変分学、微分方程式、保型関数論を巻き込んだ一連の問題だろう。この部分はやはり面白い。なかでも、真島氏の解説が群を抜いている。
正4面体の体積と直方体の体積が分割等積でないことを示したのが Dehn だったというのも西山は寡聞にして知らず、面白い発見だった。おまけにその証明もわかりやすい。ここらあたりはさすがに杉浦先生。他にも直接問題解決と関与した後藤守邦、永田雅宜の両者の解説も興味を引くに違いない。('97/4/21)
G. I. Lehrer (ed.),
Algebraic Groups and Lie groups,
Australian Math. Society, Lecture Series 9, Cambridge Univ. Press, 1997.
To Index of Booksご注意 : *** 西山は読んでいません。***
タイトルがなんだかなぁという感じを受けますが、中身は主に代数群の代数多様体への作用・軌道分解、Lusztig 理論(量子群、 canonical base, KL 多項式)を扱っている論文を集めた論文集。 Richardson に捧げられています。寄稿者は豪華な顔ぶれで、目についた人だけでも Borel, Carter, Concini, Procesi, Lusztig, Springer, Steinberg ... と書き切れないぐらい。Richardson 追悼ということで年配の方が多いのはうなずけますが、すごいパワーのようなものを感じます。
面白そうだなと思ったのは Springer の論文で Vogan の Irreducible characters... の論文を代数的に再証明しよう(あるいは内在的な構造を明らかにしよう)という試みと、 Concini-Procesi の量子 Schubert 多様体の話。他にも放物型部分群のベキ単部分群上の軌道分解の話とか Harish-Chandra morphism の話なんかもあるようです。 (西山: 1997/2/14)
B. {\O}rsted and H. Schlichtkrull (eds.),
Algebraic and analytic methods in representation theory,
Perspectives in Mathematics Vol. 17, Academic Press, 1996.
To Index of Books1994 年の夏にデンマークで開かれた European School of Group Theory の講演記録。しかし論文集ではなく、よくまとまった exposition が5つ収録されています。著者は H. H. Andersen, A. Joseph, V. S. Varadarajan, D. A. Vogan と東大の小林俊行さん。その中でも特に Joseph, Vogan, Kobayashi の3人のレクチャーは西山にとって興味があります。また Joseph, Vogan の二人は orbit method の話を中心に据えていてこの二人のアプローチが違うだけに面白いボリュームになっていると思います。 Joseph の方が geometric, Vogan の方が algebraic という感じを受けますが、どうでしょうか?
('96/11/14)
A. L. Onishchik and E. B. Vinberg (eds.),
Lie groups and Lie algebras III (Structure of Lie groups and Lie algebras),
Encyclopedia of Mathematical Sciences vol. 41, Springer-Verlag, 1994.
To Index of Booksご注意 : *** 西山は読んでいません。***
新刊書ではありませんがやっとつい最近中身を眺めました(もちろん (?) 西山は読んでいないので以下の記述は割り引いて考えて下さい)。著者は編集者の二人と V. V. Gorbatsevich。 前半は Lie 群と Lie 環の数多い構造論の教科書と似たりよったりの内容ですが、特色としては Dynkin の影響が色濃い(cf. S. G. Gindikin and E. B. Vinberg (eds.), Lie groups and Lie algebras: E. B. Dynkin's seminar, AMS Translations (2), 169(1995), AMS)のと最近の著作であることから記号、記述が現代的である、自己同型群の有限部分群についての記述が見られることぐらいでしょうか?
第5章以下はこの本の特徴的な記事といってもいいかも知れません。第5章では例外型の Lie 環の構成(あるいは Lie 群の構成といってもいいと思いますが、実形までやってます)、第6章では部分 Lie 環( Lie 群)の分類と構成について、第7章では低次元の Lie 環の完全な分類、がなされてます。
全体に良くまとまっていて利用しやすい本になっていると思いますが、元がロシア語のせいかロシア系以外の数学者の仕事に関する記述があまりありません。例えば西山が参照したところでは Lie 環の極大ランクを持つ部分環の分類についてはもちろん Dynkin の仕事があるのですが、 Borel-de Siebenthal の仕事については触れられていません。日本人では後藤守邦、杉浦光夫、斎藤正彦の3人が引用されているだけのようです [※後で見直したら他に2、3名引用されているようです]。もちろん岩澤分解とか佐武図形などは出てきますが… 歴史的な記述がきちんとなされていないというのは利用者から見れば残念に思います。('96/11/10)
岩波講座「現代数学の基礎」刊行にあたって
現代数学への誘い -- 読者の皆さんへ --
新刊書とは違うかも知れませんが、10月から刊行される新シリーズの案内用の小冊子(無料)です。学会にもたくさんばらまかれていたのでほとんどの方が目にしているでしょう。前半が編集委員による座談会(司会は青本先生)、後半は各巻の目次です。
座談会の方はあまり目新しいこともなくちょっぴり退屈です。ただ深谷さんと砂田さんの見方の食い違いというか、すれ違いというか(笑)が面白いですねー。西山としては深谷さんの方に共感をおぼえます。
目次だけをみても実際とは大分違うのでしょうけど、表現という言葉が目次に挙がっているのは「 Lie 群と Lie 環」(大島利雄・小林俊行)、「群論」(寺田至・原田耕一郎)、「環と体」(堀田良之)の3つのシリーズです。前の「基礎数学」のシリーズでも「 Lie 群と Lie 環」はありましたが表現論とは何ら関係がありませんでした。しかし今回は Lie 群の無限次元表現とか等質空間上の離散系列などが正面きって扱われることになりそうで、期待しています。しかしここまでくればやはりタイトルに「表現論」とか「調和解析」の言葉が欲しかったですねー。
「群論」にしてもその 2/3 が表現論に当てられているようですが、その部分は岩堀先生のものとあまり大差ない(というか後退している?)ように見受けられます。もっとも通常の有限群論の話もしないといけないのではしょうがないかも知れません。こちらは出来上がりがもっと違ったとんでもないものになることを期待しましょう。
全体を通してみて目新しいのは「Morse 理論の基礎」(松本幸夫)ですね。こういうのが基礎的な教科書に入ってきたのは画期的なことじゃないでしょうか。また「数論」の「第3章 ζ」というのもすごいですよね。楽しみです。
青本和彦他著、岩波講座現代数学への入門、現代数学の流れ2、岩波書店, 1996.
この「現代数学の流れ」というシリーズが何を意図したものかは西山は知らないのだけれど(1の方に書いてあるんでしょうね、きっと)知識のないものには読みづらく、あるものにはあまり役に立たない不幸な位置付けになってしまっている。しかし例えばこれから大学院に入る(あるいは1、2回生が学部の講義を選択する)際の各分野についての大まかな指針のようなものは与えていると思う。 それと歴史的なことに配慮はされているようです。
今回ここに御登場願ったのは「第3章対称性の数学」「第4章無限次元」(なんだ?このタイトル?)「第5章可換から非可換へ」の3章で表現論について触れられているからです。第4章はいまいちはっきりしませんが他の2章はきっと神保道夫さんが書きはったのではないかと思います。超局所解析・空間の量子化などというタイトルも見受けられます。おもしろそう?
('96/7/16)著者はちゃんと奥付けに書いてあったんですね。さる人から教えてもらいました。で、第三章は上野健爾さんでした。なんか意外な感じですが、確か上野さんには表現論の研究集会でも話していただいたことがあるのだ。
('96/7/17)
S.G.ギンディキン(三浦伸夫訳)、 ガウスが切り開いた道、 シュプリンガー・フェアラーク東京 , 1996.
ご注意 : *** 西山は読んでいません。***
目についたので買ってきました。
内容は表現論とはあまり関係ないですが、最後のインタービューは小林俊行さん@東大数理が聞き手になっています。高木貞治の「近世数学史談」とかなり重複がある(というかそのサブセット的?)ようです。目次を見ただけなので良くわからんけど。今日見たら続巻が出てましたね。タイトルは「ガリレオの17世紀」。ちなみに京大生協は7月6日まではシュプリンガーのブックフェアで15%びきです (^_^)v
ご注意 : *** 西山は読んでいません。***
上野先生@京大の代数幾何入門などと同じシリーズです。
内容はルベーグ積分、フーリエ解析、ウェーブレットの入門という構成で学部の2回生ぐらい向きの教科書ですね。なかなか良くまとまっているようなので講義にでも使おうかと思っています。
最後の経歴の部分によると猪狩先生は今年還暦のようですね。
Editors: Herbert Heyer and Takeshi Hirai,
Infinite dimensional harmonic analysis, Transactions of a German-Japanese Symposium.
T\"{u}bingen, 1996.
西山も参加させていただいた日独シンポジウムの報告集です。西山のところに余分が5冊ほどあります。興味のある方にお送りしますのでお知らせ下さい。論文の寄稿者は日本では平井、須藤、尾畑、洞、越他の方々、ドイツ側では Albeverio, Hazod, Heyer, Kaniuth, Voit et al. といった方々になっています。
なお残念ながら一般の販売はしないようです。
表現論の日本語の教科書を集めてみました。この他にも松島さんのリー環の本とかありますが、おいおい追加してゆこうと思います。
もうすでにここまでくると初心者向けの入門書とはいえませんが、「常識」であるにもかかわらず日本語の本で Lie 環の最高ウェイト表現の解説をしてあるものはほとんどありません。このノートでは群の表現との関わりも含め重要なことが手際良くまとめられています。証明は省略されていることは多いようですが、証明の方針は示してあるし、そうでなければどの文献を当たれば良いかは書いてある。続きを書く気はありませんか>松本さん
Weyl-Schur の双対性と呼ばれる一般線形群と対称群の表現の間の対応について述べたもの。特に対称群の表現について詳しく、入門書としても良いと思う。ただ基礎数学のシリーズが出たのは1980年前後でそれ以来1度再版されたもののあとは絶版状態であるから手に入りにくいかもしれない。
ある群の表現を考える時、その群と既約ユニタリ表現の全体の成す空間の間には双対性が成り立つ。局所コンパクトアーベル群の時にはこの双対性はポントリャーギン双対性と呼ばれ、コンパクト群の時には淡中双対性と呼ばれる。一般の局所コンパクト群の時にこの双対性を述べたのが(ポントリャーギン−淡中−)辰馬の双対定理である。その定理を見出した本人による解説書。
双対定理にとどまらず、表現の GNS construction (正定値関数と表現の対応ですね)とかユニタリ表現の直積分分解、Chevalley の複素化と双対定理との関係など話題は幅広い。
櫻本さん@福井大学教育による書評が雑誌「数学」にあります。一応叢書の最終巻が36巻で「ユニタリ表現」となっているようです。さて…
西山が学生だった頃の教科書でした。この本を読むと本当に解析している気になれます。 Lang の $ SL_2(\R) $ とは趣がかなり違いますね。
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